ネームできる講座受講生の月森キツネ先生作「デザインの先生」が第86回小学館新人コミック大賞 青年部門佳作を受賞!
「ネームできる講座」をはじめ、個別相談やネーム大交流会など東京ネームタンクの様々なサービスを利用されてきた月森先生に受賞までの経緯を伺います。
聞き手は持ち込み先・進路相談などで月森先生を担当していた漫画ソムリエ・東西サキさんです。
休職をきっかけに、独学ではじめての1本を描き上げた
東西:では、月森さんにいろいろ伺っていこうかなと思います。よろしくお願いします。
月森:お願いします。
東西:まず、月森さんと漫画の関わりについて聞いていきたいなと思います。
月森さんは、昔から漫画を描いてらっしゃったんでしょうか?
月森:子供の頃から絵は描いてました。漫画を読み始めたのは小学校の時で、よくある雑誌とか少女漫画とかを読んでました。
絵を描くのが好きだったので、憧れの職業が漫画家だったんです。ただ、高校生ぐらいから漫画を読まなくなって。でも、芸術関係のことはすごい好きだったんで、芸術系の大学でデザインを学びました。なので、漫画家を目指して具体的に行動するのは、大人になってからでしたね。
東西:なるほど。その後、どういうきっかけで漫画を描いてみようって思ったんでしょうか?
月森:大学を卒業した後は就職活動がうまくいかず、フリーターをしてたんです。それで、数年前にちょっと体調を崩してしまって、お仕事をお休みしたので空白期間ができました。何しようかなって思ってた時に、そういえば子供の頃は漫画家になりたかったなっていうのを思い出して。
東西:なるほど。
月森:それまでは何か自信がなくて、漫画を描いたことがなかったんです。でも、ちょっと時間が空いたんで、描いてみようと。
まったく独学で、誰にも見せずに描いていました。それでもなんとか40ページくらいの漫画を描き上げまして。
それが初めての一本ですね。
東西:その作品がネームタンクに持って行かれた作品ですよね。
月森:はい。受講する時に持っていったキノコの漫画の原型ですね。

キノコの漫画「MORINOUTA」のネーム。
東西:確か、ネームできる講座を受講いただく前に僕の持ち込み先・進路相談で見せてくださったんですよね。オンラインでご相談いただいて。
月森:そうなんです。初めての漫画を出版社に持ち込みしようと思ってご相談しました。
私、すごい地方に住んでたので、東京の出版社に持ち込もうと思ったら、一ヶ月前くらいから予約しなきゃいけなかったんです。
とにかく初めて描いたんで全然スケジュールもうまくいかなくて、2日くらい徹夜してそのまま東京に行ったんですけど、持ち込み先ではいろいろと厳しい意見をいただきました。
それは今思うと全然仕方ないことなんですけど、当時は自信を失ってしまって。
自分の漫画が読み返せないし描いてても楽しくなかったし、自分の漫画が本当に好きになれなくなりました。
東西:打ちのめされてしまったみたいな。
月森:そうですね。しかも、子供の頃憧れてた漫画家と、現実の自分は全然違ってて、何かすごいショックで。
ちょっとそこから漫画を描けなくなって、その頃は漫画に関係ない仕事をしてました。
東西:それは、デザインとか、イラストを描くとかのお仕事ですか。
月森:いえ、デザイン関係でもないです。描くことと関係ない仕事を、生活のために割り切ってやっていた感じでしたね。
日本と創作から離れた充電期
月森:それで、その後、1年ほどフィンランドに行きまして。
東西:そうだ、海外行かれてたんですよね。
月森:はい。そういう感じで、ちょっと芸術からは離れてたんです。
この時期は、何か自分の中で迷ってる時期で。
東西:あー、迷ってる時期の経験っていうのが、作品にものすごく出ている感じですよね。クリエイトからも日本からも離れたいみたいなところが出てる。
月森:何かいろんなものからもう本当に逃げたくて。
もともと北欧にすごく興味があったんです。通算1年くらい、自然の中でゆったりして暮らしてました。
クリエイト以外にも、自分の興味のある分野に触れていた感じですね。
フィンランドで農家のお手伝いをしてたこととかが、自分の中で大事な思い出になってます。
東西:この時の経験も描かれた作品にすごく出てますよね。
月森:帰国した後は、以前よりもさらに田舎な土地に住むことになりました。そこで、また自分の中で辛い時期がやってきて、自分を見つめ直さないといけなくなったんです。
そこではまた漫画とは違う仕事をしていて、生活は安定していたんですが
あんまり外との繋がりがない生活環境だったんです。大学時代は周りに創作する美術系の友達とかもいっぱいいたり、刺激をもらったりして楽しかったけど、田舎にいるとそういう人たちと繋がれなくなってしまって。
そして田舎での人とのつながりにも難しさを感じていました。
曖昧な言い方ですけど、すごく苦しい時期でしたね。
東西:人間関係も含めていろいろ辛かったっていう感じですよね。
月森:はい。何か辛い時って全部辛くないですか?
人間関係でも経済面とかでもそういう時期で、そんな中で何かできるかなって思ったのが、また漫画を描くことだったんです。
東西:何が好きだったかを思い返してみると、それが創作だったと。何か原点にかえったような感じでしょうか。
月森:本当そうですね、原点に。
やっぱり漫画描いてる人を見ると「ん?」ってなる時があって。「自分も本当は漫画をやりたいんじゃないの」みたいな感じで。
でも、初めて描いた漫画が何かうまくいかなかったり、持ち込みでも結構厳しいこと言われたトラウマがあったんで、なかなか踏み出せなくて。
東西:リスタートするのに準備期間が必要だったんですね。
再スタートのため、ネームタンクを訪れる
月森:また漫画を描きたいって気づいた時に、今までずっと一人で描いてきたんですけど、今度は誰かに教わりたいって思って。
地方なんで、オンラインでできるところを探してて、検索して見つけたのがネームタンクだったんです。
東西:検索いただいて、個別相談にきてくださったと。
月森:はい。ネームタンク見て、直感で「あ、ここ行ったら楽しいな」と(笑)。
東西:楽しい(笑)。
月森:そう勘で思って。
すぐにも受講したかったんですけど、ちょっと状況的に難しかったので、まず個別相談をお願いしたんです。その時の担当は馬場先生でした。
※馬場彩玖 漫画家、東京ネームタンク講師。代表作は「僕が妹を殺すまで」(小学館)。
東西:最初は馬場先生にネーム・プロット相談をされたんですね。ネーム相談の印象はどうでしたか?
月森:まず第一声で「すごいいいですね」って言ってもらえたのを今でも覚えてます。
嬉しかったし、ちょっとびっくりしました。初めて反応をもらえたっていうか。
持ち込みとかのことでモヤモヤしていたけれど、それで気が晴れました。
東西:ネーム相談の中で作品のいいところとか、ブラッシュアップのポイントのフィードバックはあったんでしょうか。
月森:そうですね。コマ割りとか話の流れとか、こうしたらもっといいと思いますよということを教えていただいて、それを元にネームを直しました。
それでネームは良くはなったんですけど、もっと直したいなって思って(笑)。結局そのリメイク版をネームできる講座に持って行きました。
その前に一回原稿にしたんだったかな。
東西:なるほどなるほど。
ネームできる講座を受けてみてどうでしたか?
月森:例えなんですけど、一人でさまよってたらすごく温かい家が迎え入れてくれたようなイメージで。今にも創作の意欲が消えそうだったんですけど、それを温かく迎え入れてくれたような場所でした。
内容もロジカルで、理論に基づいたものなんですけどすごく易しい言葉で話してくれるんで内容がすんなり入ってきて。
東西:講座を受けて、気づきみたいなものはありましたか。
月森:「ネームは手紙だ」っていう言葉がいちばん印象に残っています。
東西:いい言葉ですね。ごとう先生が初日の最初に話してくれるやつですね。
月森:あと「漫画は感情を描く」っていうこと。
私、講座を受けるまで、自分の漫画が漫画らしくないのは何でかなってずっと考えていて。
原稿用紙にコマ割りして絵を描いてセリフ入れてるんですけど、なんか漫画らしくならなくて、これは何でだろうってことが本当に分からなかったんです。講座を受けて、自分の漫画には「感情を描く」意識が薄かったんだと気づきました。
東西:ネームできる講座で、友達はできましたか?
月森:はい、友達というか、漫画描く仲間のつながりができました。
この後、漫画を描く人とたくさん出会っていく事になるのですが、穏やかで面白い人が多いなと感じていて。ご縁がある方とは仲良くできたら良いなと思っています。
商業漫画と向き合い、自分の「好き」が明確に
東西:ネームタンク受講後、どういう経緯で受賞されたんでしょうか?
月森:ネームできる講座の後、ネームを原稿にして、それを2019年7月のネーム大交流会に持っていきました。
※ネーム大交流会 作品を通して人と人がつながる、オリジナル中心のネーム展示会。
サークル参加者同士、作品を読み合って、作品のいいところをコメントし合う。
月森:最初は商業を視野に入れてたのもあって、ネーム大交流会には編集者の方もいらっしゃると聞いて、参加しました。その時に参加者の方からいっぱい反応をもらったし、漫画を描く知り合いや繋がりがいっぱいできました。それが嬉しかったですね。
あと、とある出版社さんに名刺をいただけて。
東西:ネーム大交流会で。
月森:はい。会の後、一回打ち合わせして、編集さんから売れるためのアドバイスをいただいたんですけど…
東西:ふんふん。
月森:何か「う~ん?」ってなってしまって(笑)。
暴力シーン・エロシーン・ホラー、この三つを入れたら売れるっていうアドバイスだったんですけど。
東西:なるほどね。適切な感じもするけど、それ月森さん的にはちょっと…っていうのもすごくわかる。
月森:確かにそうなんですけど…って感じで。
私、その時ちょうど自分の好きなものを意識しはじめてた頃で。
東西:あー、アドバイスを頂いたけれども、もうその頃には自分のスタイルというか、好きなものが明確だったと。
月森:はい。マンガスクリプトDr.ごとう先生の動画を見てて、
「自分の好きなものを明確にして、それを漫画にする」というお話があって。それ、大事だなーって思い始めた頃だったんですね。
漫画の技術や最新の知見を動画で提供するYouTubeチャンネル「マンガスクリプトDr.ごとう」。
確かにその編集さんのアドバイス通りにすれば売れそうな感じはするけど、それって本当に自分のやりたいことなのかなと疑問に思って。
東西:そうですね、月森さんがバイオレンスで漫画を描き始めたら、僕「どうしたんですか!?」って電話しますね(笑)。読む人が引いちゃいますよね。
月森:そうなんですよ。「自分のスタイルはこれだ」ってはっきりしていったのがこの頃だったんですね。
私の好きなものっていうのが、絵本や童話の雰囲気だったんで、正直に「そういうことが好きで、こういうことはやりたくないんです」というメールを編集さんに送りました。
東西:なるほど。そしたらどうなったんですか。
月森:「それじゃ商業じゃ難しいですね」って言われて。
東西:なるほど、ほうほう、火がつきそうなセリフですね(笑)。
月森:(笑)つきそうな。そういう感じで、そことはご縁がなかったんですけど、「商業でやっていけない、難しい」っていうのは事実だなと思って、ちょっと悩みました。
自分でも、自分の作品は万人受けするものじゃないと思ってたし、やっぱり(売れる作品を描くことより)自分の好きなものの方が大事で、そこを変えることは絶対嫌だったんで、ちょっと一回「商業じゃないとダメ」っていう考えを捨てようと思いました。
それまでは割としっかり「商業目指そう」と思っていたんですけど、ちょっと保留にしようという状態でしたね。
東西:なるほど。商業ではない方向で作品を届ける方法を模索してみようかなというふうに考えられたんですかね。
月森:そうですね。少なくともこの「MORINOUTA」っていう漫画は、そういう、商業でバンバン売れるような作風じゃないと思ったんで。
大交流会で編集さんに声かけてもらったりしたけれども、自分のスタイルみたいなものを考えた時に商業とは違う届け方があるんじゃないかなと思って、
それで初めて同人誌を作って、コミティアに参加することになったんです。
コミティアで得た「自信」と「楽しさ」
東西:あれ、すごい装丁の本なんですよね。当時Twitterでも「綺麗」とか「素敵」っていうつぶやきを見ましたよ。
月森:あっ、ありがとうございます。デザインを勉強してたし、ちょっとデザイナーの仕事もしてたんでそういう経験が生かされましたね。
こんなカンジにシアガッテます!#MORINOUTA pic.twitter.com/he0UnLJSQL
— 月森キツネ (@morinouta43) December 18, 2019
東西:ね、素敵な本ができましたよね。すごく印象的。タイムラインで表紙や装丁ができあがったのを見て、改めていい作品だなあって思いましたね。
初めての同人誌を作ってみてどうでしたか。
月森:楽しかったです。一から漫画を描いて本を作るって、こういうことも自分で決めれるんだっていう気づきがいっぱいで。
やっぱりデザイナーとしてやってる時は、クライアントの意見や注文の方がもちろん第一だったんですけど、同人誌だと自分の趣味を全部入れられるんですよね。
東西:「MORINOUTA」をネームタンクに持って来られて、個別相談やネームできる講座を受けられて、そしていろいろな紆余曲折ありましたけども、同人誌を作ったことで作品として昇華されたわけですね。
その後はどうなったんでしょうか。
月森:コミティアですごく自信がつきまして、すごく「楽しいな」っていう気持ちも出てきたんです。
このまま商業とか目指さなくても、こうやって同人活動するのもいいなってちょっと思って。
本当すごく幸せだったんですよね、コミティアで。
東西:なるほど。商業だけではないって気づきがあったんですね。
月森:あの、東西先生に「何冊売れました」ってお話したのは覚えてますか?
東西:あ~、何か、会話の中で「初出展でこれだけ売れました」ってぽろっと出たんですよね。
月森:はい、それで「初めてでそれだけ売れたらすごいですよ!」って(笑)。
東西:そう「マジで!?」って言いましたね(笑)。
月森:その時の東西先生の反応もあって、すごく満たされて、こういう道もありだなって思ってたんです。
その後もコミティアではまた人を選ぶ本を出していて。ですが、自分の中にはすごい何か伝えたいこと、多くの人に伝えたい自分の物語というのもあって、それが賞に応募した「デザインの先生」になりました。
多くの人に届けたい物語を見出し、再び商業へ
月森:私自身も美術大学でデザイン系の学科にいたんですが、そこでの出会いで自分自身が大きく変わったと思っていて。
この話は「もっと多くの人に伝えたいな」って思って、それって商業目線なのかなと思って。
物語をより多くの人に伝えるにはどうすればいいんだろうって向き合った作品ですね。
東西:学生時代の思い出とか経験を、商業向けの作品として作ってみようと。
月森:はい、そうですね。
「デザインの先生」のテーマは「人は出会いで変わる」なんですが、そのテーマというか、気持ちは、どんだけ偉大な人が「それは違う」って否定してきても「そんなことない」って言える気持ちだったんです。
そういう気持ちで漫画を描くとどうなるのかなっていうのもあったし、挑戦したいなっていう気持ちがまた復活しまして。
東西:なるほど。で、「デザインの先生」を描き上げたと。賞に送った「デザインの先生」、僕も投稿前に読ませていただきましたね。 「S社に投稿したいんですが」とご相談を受けて、いろいろ投稿先をおすすめした気がします。
月森:2019年11月の持ち込み先・進路相談ですね。ネームタンクでは、その前にネームを振り返る会でも1回見ていただきました。
※ネームを振り返る会 ネームできる講座受講者だけが参加できる、月1回の講評配信。講師は「ネームできる講座」を担当するごとう隼平。
月森:「デザインの先生」を投稿した後は、また菌類漫画の続きをコミティア用に出そうと思ってたんです。そしたら、それを描いてる途中、今年の6月くらいに賞の結果が忘れた頃にやってきて。
東西:コミティアの次回作の構想を練っていた頃に、編集部から受賞が決まったと連絡が来たと。
月森:コロナのこともあったので、遅れてたらしいんですよ。 私も「あ、落ちたのかなー」と思ってて、落ちたしリメイクしようかなって思ったりしてました。
東西:やっぱり連絡が来た時は嬉しかったですか?
月森:びっくりしました。 結果まだかなって思うことすら忘れてた頃だったので「え、受かったの!?」みたいな感じでした。
商業と同人を両立させる、柔軟なスタンス
東西:受賞後、今の現状としてはどういう状況なんでしょうか。
月森:今は読み切りを描いてますね。
東西:受賞した編集部の、商業用のネームとか作品を作ってるみたいな感じですか。
月森:そうですね。並行して、同人誌の作業もやっています。もう1回コミティアに持っていこうかなって思っていて。
東西:なるほど。商業もやりつつ、コミティアみたいな読者さんと直接やり取りして繋がれるような活動をやって行こうという創作のスタイルに、紆余曲折あって落ち着いたという感じですか。
月森:そうですね。色々活動して思ったのが「自分はここじゃないと駄目」って決め込むとすごく辛くなると気づいて。
東西:なるほど。場所を固定してしまうと辛くなる。
月森:はい。商業しか目指さないとか、同人活動だけやるっていうのは何かこう、自分には向いてないって思ったんですね。
東西:なんか今の時代に合ってますよね、そういう作家さんのスタンスというか考え方って。
月森:そうですね。固定するのはなんかしんどい。
商業向けの作品だけを書くよりも、この話は商業向きとか、万人受けしなくても描きたいもの描くって気持ちの時はコミティアに出すとか、そういう方が私は合ってるなって思って。
東西:ある意味、ネーム大交流会の後、商業的なアドバイスを受けた時に今の考え方が出来たというか、明確になったんですね。あそこが転機になってますね
月森:はい、そうですね。
自分の「好き」を大事にする作品作り
東西:今後のスタンスとしては、やっぱり自分の場所を固定せずに活動して行くみたいなことでしょうか。
月森:理想はそれですね。
何かこう、言葉が見つからないんですけど、商業非商業の定義がないようなものをイメージしています。
自分が割とジャンルとか拘らずに楽しむタイプなので、形式やジャンルにとらわれずに、作品を作っていきたいです。
東西:これからは作家として色々なチャレンジをしていくということですね。
今後、どういった作品を作っていきたいか、展望はありますか。
月森:自然の美しさとか生き物の可愛さを描いていきたいですね。
あと、気持ちがあったかくなったりするような、読んだ人の糧になるような物語を描いていきたいです。
流行り路線じゃなくても、流行りと関係なく好きになってもらえたり、いいなと思ってもらえるような、長く愛されるものを作っていきたいです。
東西:それは月森さんにとって、常にあるテーマなんですね。
月森:自分の個性や能力を大事にしつつ、より多くの人に伝わる方法を模索しながら物語を作っていきたいですね。
東西:では、最後の質問です。
作品を手に取ってくれた方に何か伝えたいことはありますか?
月森:まずは、ありがとうという気持ちですね。
特に今年なんて、みんな辛かったり、しんどかったりすると思うんです。
こういう2020年になって思うのが、自分の好きなものを大事にするのって、いいなっていうことで。
作品を手にとってくれた方に伝えたい…ということかは分からないんですけど、私も、手にとってくれた方も、自分の好きなものを大事にしていこうね、ということを思っています。
東西:ありがとうございました。それでは、ここでインタビューを終了させていただきたいと思います。
月森:はい、ありがとうございました。
—
収録後、月森先生が逆インタビュー! 漫画ソムリエの思う 「作家らしさ」とは?
月森:受賞後の進路相談の時に、東西先生に「作家らしくなりましたね」と言ってもらえた事が嬉しかったのですが、どのあたりでそう感じてもらえたのでしょうか?
東西さんの思う「作家らしさ」ってどういうことなのか聞いてみたいです。
東西:新しいネームを拝見して、強い作品だなと思ったことがいちばん強いんですかね。あれを読んだ時に、月森さんが本当に思ったことを描いたお話なんだなってすぐにわかったんです。これに近い経験をされて漫画を描かれたんだなって。そして、このメッセージを伝えたいんだって気持ちをものすごく強く感じました。
月森さんの作品をはじめて読んだ時は、伝えたいっていうより「こういうものを私が楽しみたい」っていう印象の方が強かった。さっきも、ネームできる講座では「ネームは読者への手紙」という言葉が印象的だったとおっしゃってましたが、たぶんそれ以前は楽しみたいって気持ちで作品を作られていた。
その次に僕が読んだ「デザインの先生」は、大学先生のエピソードとか、その頃の経験と気持ちを共有したいっていう作品だったと思うんですよ。
そして、いちばん新しい、留学した時のエピソードとかを盛り込んだネームは、そういうメッセージを読者に伝えた上で、読んだ人がこういう気持ちになってくれると嬉しいな~までがある。
月森:ああ~、なるほど。
東西:読者をここに導いていくっていう意思があって、導いていく先が明確にイメージされていて、それが伝わるといいなってところまで昇華されている。
月森:伝えたいというところから、伝わってたらいいなってところに変わったということですか?
東西:難しいんですけど、「伝わらなくてもいいから私が楽しみたい」っていう気持ちで描いている作品から、「同じ気持ちをもってる人がいたらいいな、届くといいな」って作品になっていき、最終的に「こういう風な道もあるよ」っていう提示になっているというか。なんて言うんですかね、届いたあとに、私はここにいるから大丈夫だよみたいな。
「経験」から「発信」に変わっていて、それがだんだん、すごくわかりやすい形になっている。どんどん変化しているなあっていうように感じられて。
月森:あ~、なるほど、よかったです。
東西:月森さんの変遷を見ているから、人が変わっていくのをどんどん見ているという感じですね。 すごい変わった。はじめて見た時の印象から、ここまでくるんだっていう。最初は何をどうしたら伝わるだろうとか、自分が伝えたいって思っているものと、実際描いてるものがちょっと違っていて、「どうしたらいいですか?」ってご相談を受けていたと思うんですが、その頃とはもうぜんぜん違う次元にいますよね。ちょっと感動しました。
月森:ありがとうございます。この次って、どうなっていくといいんでしょう?
東西:そこからは、もう「何をどう伝えていくか」っていうところだと思いますね。
月森:あー、そうですね。
東西:伝えたいものが何かとか、スタイルはもう明確なものがあるので。
最初の頃は、描きたいものは明確なんだけども、それって絵の方が先にあって、こういうことを伝えたいとかではなく「この絵が描きたい!」とか「こういう感情とか関係性とか描きたい」そういう風な感じだったんですよね。
途中からどんどん「読者にこう見えてほしい」という風に変わってきた。読んだ時にもう、さらっと入ってくる感じですね。リラックスして描かれているというか、肩肘はってない感じがしてきた。最初の頃は、描くのが難しいってところから、途中からウーッと力んで「届けるぞ!」って感じで、そして今度はそういう力みみたいなものがとれて、これを伝えたいっていうものがシンプルにすっと入ってくる感じ。
月森:なるほど。すごく大事ですね、これ。さらっと入ってくるっていうの。
東西:そうですね。やっぱ技術的なものもあるし、考え方みたいなところもあるのかなっていう感じですね。
月森:わかりました。ありがとうございます。
東西:これって何年前なんだろう?
月森:えーと、2年前?
東西:2年でこんなに変わるんだーっていう。最初に馬場先生に相談されたのが2018年の5月なので、2年とちょっとですね。こんなに人は変わるんですね。
月森:ネームタンクとの出会いのおかげですね。ありがとうございました。

月森キツネ icon-twitter website
物語が生きる糧。MORINOUTAという菌類の物語を描いています。 morinouta.d@gmail.com ✺WebShop→http://morinouta.booth.pm
なんと
— 月森キツネ (@morinouta43) July 28, 2020
小学館新人コミック大賞に投稿した漫画が、佳作を頂きました。
こういう時なんて言葉をお伝えすればいいのかな。
まずは、ご報告させて頂きます🍃
こんな事ってあるんだなぁ。 pic.twitter.com/aoctiXOQLd
ネームできる講座の詳細はこちら!
