ご挨拶
初めまして。尾切美月と申します。
この度、第34回スクウェア・エニックスマンガ大賞にて準大賞&審査員特別賞をいただき、ガンガンJOKER 9月号(2019年8月22日発売)にて受賞作を掲載、商業誌デビューをさせていただきました。
それをキッカケに今回、以前お世話になりました東京ネームタンク様のサイトにて記事を書く機会をいただきましたので、ここでは個人的な「キャラクターデザインの際に意識している事」をまとめていきたいと思います。
とはいえ、あくまで個人的なやり方なので「こんなやり方もあるんだな〜」くらいの気軽さで見ていただけたら幸いです。
目次
・商業デビューまでの経緯
・キャラデザについて①主役はシルエットから
・キャラデザについて②服はキャラクター自身の好みで
・あとがき
商業デビューまでの経緯
―はじまりは同人誌即売会
まずは最初に、同人誌を描いていた自分がなぜ商業漫画の世界に踏み入れたかご説明したいと思います。
元々自分はゲーム会社に勤めており、2015年から趣味で二次創作の同人誌を作っていたのですが、体調を崩したのをきっかけに2年ほどで退職しました。それから半年ほど休んで回復しつつあった2017年の夏、何を思ったか一度オリジナルで漫画を描いてみようと思い至り、1冊目のオリジナル同人誌が生まれました。天啓というより奇行です。
そんな流れで出来た同人誌ですが、せっかくだからと地元のイベント(同人即売会)で頒布したところ、ありがたい事にそこで一人目の担当さんに商業で描いてみないかとお声がけいただきました。そこで初めて趣味ではなく仕事として漫画を描く事を意識し始めました。
本当は、オリジナル作品を描くのは1冊目の同人誌で最初で最後だと思っていました。1冊目を描き終わり入稿を済ませた時、次は何を描くかも考えていなかった上、貯金も大してなかったため回復したらまた就職して同人誌でも作るのかなあとぼんやり考えていました。
しかしその後、ありがたい事に同人誌にご感想やファンアートをいただき、それがとても嬉しくてもう少し続けてみようと思い2冊目を描いてみたところ、2人目の担当さんにお声がけいただきました。そしてその担当さんが作品をマンガ賞に出してみようとご提案してくださり、今に至ります。
ただただ運が良かったのだと思うのですが、1人目の担当さんがいなければ私の漫画は趣味止まりだったかもしれません。オリジナル同人誌にご感想をいただけなければ2冊目を描かなかったかもしれません。そうなれば2人目の担当さんにも出会わず、マンガ賞に出すという発想も機会もありませんでした。今ある自分の作品を作ってこれたのは周りの皆様のお陰ですので、この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございます。
キャラデザついて
―主役はシルエットから
ここから本題の「キャラクターデザインの際に意識している事」に入りますが、自分がキャラを作る上で特に気をつけているのは2つほどあります。
まず1つ目はシルエットです。
自分がキャラを作る時、一番に決めるのは顔でも服でもなくシルエットから入ります。
具体的には下の絵のように、素体を並べたもの(※左)の上に髪や服の形状を思いつく限り描き出していきます(※右)
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これだけでも可愛い系、クール系など雰囲気が違って見えると思います。
何故このような事をするのかというと、作中でキャラの見分けをつけやすくするためです。
例えば似たようなキャラ2人が同じコマにいたとします。そうすると見る側に一瞬「どっちがどっちのキャラ…?」と疑問を与えてしまい話(テンポ)の邪魔になる可能性があるのでそれを避けるためにやっています。
漫画を読んでいただく時に、そういった一見どうでもいいと思えるような引っ掛かりが続いてしまうとストレスになってしまいますので、基本的なシルエットさえ違っていればまずキャラの判別に迷う事はないだろうという考えです(そこまで気にすることでないかもしれませんが…)
そして各キャラの大まかなシルエットを決めたら、それらを並べてシルエットが被っていないか、似たようなシルエットになっていないかを確認しては調整を繰り返しつつ、よりキャラのイメージに近いシルエットを作っていきます。
シルエットならば初めからキャラの細部を考えるよりハードルも低く、手もつけやすいと思いますので、もし「キャラの容姿を考えたいけどどんなデザインにするか迷ってしまう…」という方がいれば一度シルエットから決めてみるのも有りかもしれません。
素体のシルエット画像を原寸(A4)データもご用意しましたので、もしよろしければご自由にお使いください。
→素材をダウンロード(Googleドライブで開きます)
―服はキャラクター自身の好みで
そして2つ目は服についてです。
自分はキャラの髪型や服装を決める時、作者である自分の趣味ではなく「そのキャラの好みや意思」を意識して案を出します。
これは「キャラクターもひとりの人間」として接するためです。
現実だと人が服を選ぶ時は「自分の好みかどうか」を視野に入れると思うのですが、そういった思考をキャラクターにも反映させる事で、そのキャラも現実の人間と同じように意思を持っているような〝人間として存在している説得感〝を持たせる事ができると考え、この方法を実践しています。
そのため、キャラの服を決める時は一旦自分の趣味は置いておき、「この子(このキャラ)はどういう服が好きそうかな」と考えながら案を出していきます。
実際にその方法を使い、完成したキャラを例に出してみます。
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上の絵は同人誌の主人公のデザイン案として描いたものです。
このキャラは「血液がマグマでできている」という設定で、怪我をすれば血の代わりにマグマが噴き出します。マグマが噴き出すとなると引火等の周囲への影響は避けられませんし、彼もそれを懸念して怪我をしないために露出はせず、厚めの服を選んで着るだろうと判断してそういう服(デザイン)にしました。
この場合、彼の好みでこの格好をしているわけではないのですが、「怪我をしないため」という理由でこの服を選んで着ていると思えばどことなく「現実の人間ぽさ」を感じられないでしょうか?
キャラの好みの他、コンプレックスを隠すためなど何でも良いので、理由があってその服を着ていると考えるとキャラにより人間らしさが出るのではないかと思います。
しかしその一方、ソーシャルゲーム等では、過度にきらびやかな服だったり、露出が多めな服(鎧)だったり、おおよそキャラが好きでその格好をしているとは思えないデザインのものもあったりしないでしょうか。
そういったデザインに対して「キャラクターの事を考えていない!」と言いたいわけではなく、それは見る人の好みや絵としての見栄えを優先しているのであって、そういった目的があるのであれば作者の好みをキャラに盛りに盛って「俺の考えた最強に萌えるキャラデザイン」で作るのも全く問題ないと思います。
むしろその方が描くのが楽しくてモチベーション維持にはもってこいなので此方の方がオススメできるかもしれません。(描く事を楽しめるに越したことはないので…)
どちらか一方が正解という話ではなく、これは個人の好みによるものだと思うので、見る側の好み(見栄え)を優先するか、キャラの好み(リアルさ)を優先するか、自分がどちら派か一度考えてみるのも面白いかもしれません。場合によって臨機応変に切り替えるのもアプローチ方法を自由に選べて楽しそうですね。
しかし結局のところ、どちらも絵に大事な要素であるのは変わりなく、キャラの意思を尊重させつつ見栄え良く描けたらそれが頂点であり最強でもあると思います。
自分もキャラデザに関して悩む事もまだまだありますが、上記のようなキャラ自身も見る人も納得できるようなキャラを描いていけるよう目指していきたいと思います。
あとがき
ここまで好き勝手に書かせていただきましたが、最後まで見てくださりありがとうございます。今回、ネームタンクさんの講座とはあまり関係ない内容の話をしてしまって申し訳ないのですが、もし一部分でも役に立ったと思ってくださる方がいらっしゃれば幸いです。
キャラデザに関しては、本当にあくまで一個人としての考えとやり方であって決して人様にオススメできるものではございませんので、やり方が合わないなと思ったら忘れてください。
漫画の描き方は(キャラデザも含め)自分も勉強中の身であり、難しくて上手くいかない事も多々ありますが、ネームタンクさんの講座ではキャラの作り方(内面)、ネームや盛り上がるストーリーの作り方等をロジック化していて大変わかりやすく丁寧に教えていただけるので、ストーリーを組み立てたいけど上手くいかない…という方にはオススメです。
これからも漫画を作る皆様、漫画を読む皆様、その他にも様々な形で漫画に携わる方々が良き漫画ライフを送れますよう祈っております。
本当にありがとうございました。
尾切美月
【お知らせ】
— 尾切美月 (@mitsuki_ogiri) August 22, 2019
本日8/22(水)発売のガンガンJOKER 9月号にて読切「深海のマーメイド」を掲載させていただいております。9月に公式サイトの方でも公開されるそうですが、紙で読める機会が今後あるかわからないのでぜひ雑誌の方でも読んでいただけると嬉しいです…!何卒よろしくお願いいたします🙇♂️ pic.twitter.com/Nw5AKyhYJY
予定より少し早くなりましたが、スクエニ漫画大賞で賞をいただいた「深海のマーメイド」がガンガンONLINEにて公開されました。(公開期間は半年間ほどです)今なら無料で読めるチャンスなのでこれを機会にぜひ読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします!https://t.co/A35LNrsuyq pic.twitter.com/bcHgOIkIFf
— 尾切美月 (@mitsuki_ogiri) August 29, 2019
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絵と漫画描いてます。
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