ストーリーとキャラクター、どちらが大事だと思いますか?
と問われてみなさんはどう考えるでしょうか。
そういえば最近ツイッターでアンケが採れるようになったことを思い出し、
実際にみなさんに聞いてみました。もったいぶらずに結果はこちら↓↓
新しくブログ記事を書きたいのですが、アンケとってみていいですか! 【漫画にとって、あなたが大事だと思うのはどちらですか?】 一般の方にも広く聞いてみたいなあ。
— ごとう隼平 (東京ネームタンク) (@goto_junpei) 2015, 11月 17
実は最初はキャラクターの方が攻勢で、スクショ撮り忘れちゃたのですが瞬間的に
キャラクター:80%
ストーリー:20%
にまで差がつきました。(たぶん眺めてた中での最高差)
しかしここからストーリー派の猛烈な盛り返しが始まります。 多くの方に回答していただくにつれ徐々に差が縮み…
そしてついにはその差8%まで!(すみませんこれもスクショ撮り忘れました…)
キャラクター:54%
ストーリー:46%
そして最終的に落ち着いたのが、最初にお見せした結果です。
この結果、僕はとても興味深く受け止めました。正直ちょっと予想外…だったかな。
予想通りだった部分
しかし予想通りだった部分もあり、このストーリー派が盛り返していくであろうことは実はそうなるんじゃないかなと思ってました。
というのも、僕がこのマンガ業界に足を踏み入れて編集部で打ち合わせをするようになり一番驚いたのが、『キャラクターに対する意識の強さ』だったからです。そしてこれは僕だけではなく、マンガ業界に長くいる人ほど、キャラクターの重要性を説かれてきたのではないでしょうか。
実際僕がこのアンケートをツイートした時に、教室に4,5名の漫画家さん、漫画家志望さんがいらっしゃったのですが、「キャラクター」を選んだ人が100%でした。かくいう僕も投票するとしたら「キャラクター」だと思います。
僕のTwitterアカウントをフォローしてくれている人は漫画家さんや漫画家志望さんが多いです。ですので最初にこのアンケートに触れるのは、よりマンガ制作に濃い「描き手」の人たちで、それが徐々にRTいただき広まるにつれて「読み手」としての一般の方の認識が入っていったのでは、と予想してます。
※このアンケートは「何をキャラクターとし何をストーリーとするのか」を明確に定義しておりませんので、雰囲気重視の話として捉えてもらえたらと思います。
僕が子供のころ、漫画好きの友人たちが言っていたのは「マンガってストーリーだよな」「ストーリーが面白くなきゃ」的な言葉でした。そして僕も、ほぼ同意していたように思います。しかしなぜマンガ業界に濃く染まると、キャラクター至上主義に変わってしまうのでしょう。その答えは、きっと単純です。
ファンはキャラクターにつく
「ファンはキャラクターにつく」というのは僕が昔直接少年サンデーの編集さんから聞いた言葉です。
商業誌という性格上、売り上げを求めなくてはなりません。つまりお客様からお金をいただく必要があり、そしてお金を出してくださるのは…「ファン」の方々です。
そして「ファン」の方々が何を求めているのかといえば、それは実は「話の道筋」ではなく、「キャラクター」だということを、マンガ編集部はよく知っています。みんながコミックスを買うのは「ドラゴンボールを集めること」でも「フリーザをどう倒すか」でもなく「悟空の活躍」が、もしくは「自分の好きなキャラクターの活躍」が見たいんですよね。
具体的に裏付けるなら「短編集」は全くベストセラーにならないことが挙げられます。もしファンの方が、その漫画家の「ストーリー作り」に魅力を感じているなら、その「短編集」もその他の代表作と並んで売り上げてもおかしくないはずですが、そのような例は稀有だと思います。(もちろんストーリー作りでファンのついている作家さんがいらっしゃるのは分かっておりますすみません!)
ですから編集部はファンのつく「魅力的なキャラクター」を求めます。いくらストーリーに凝っても「魅力的なキャラクター」が存在しなければ売り上げにならないからです。これがキャラクター至上主義になる単純明白な理由です。
予想外だったこと
しかしこのことは、僕が子供の頃ならいざ知らず、これだけキャラクタービジネスが流行し、マグカップが出て、ねんどろいどが出て、抱き枕が出て、サブキャラクターを主役とするスピンオフ作品や二次創作同人誌などが盛り上がりを見せて、「キャラクターの重要性」というのはもう広い世間にとっても、当たり前の事実となっている可能性もあると考えていました。
ですのでこの「ストーリー:44%」というのは(約半分と捉えることもできる数字ですよね)僕の中で予想以上に高い数字、でした。そして改めて深く考えさせられる結果だったと思います。
「ショービジネスとしての漫画」
予想以上に「ストーリー」が求められている、ということではありません。むしろ逆ということも。
これはあくまで個人的な考えですが、一般の読者さんにとってキャラクターは「当たり前のように存在している」。他のジャンルのファンと同じように、「アイドル」「サッカー選手」「バンドマン」などなど…それらと同じように「漫画のキャラクター」というものを受け取っているのではないでしょうか。
「アイドル」「サッカー選手」「バンドマン」は”実在”します。漫画のキャラクターは元々の意味として「空想上の存在」ということだったはずですが、その意味を超えて「現代のキャラクターは”実在”と並ぶ存在として認められている」のかもしれません。
漫画家としては「キャラクターは、最初は実体のないその手で固めていくもの」かもしれませんが、ファンの方にとっては「キャラクターがいるのは、他の”実在”する対象と同じように当然」なんですよね。
ですから「キャラクター」か「ストーリー」と問われた時に、
(キャラクターがしっかり存在するのは当たり前として)さらに「キャラに魅力があるのか」「ストーリーに魅力があるのか」で考えると「ストーリーを選ぶ」という発想ではないでしょうか。
それがこの「ストーリー派:44%」の数字が示すものなのでは…という想像です。
当然の前提としてのキャラクター
そう受け止められているとすると、漫画家としては
「しっかりと揺るぎなくそこに存在するキャラクター」を作らなくてはいけない気分になってきますよね…
ハードなリクエストですが、課題が明確になれば、あとはそこを突き詰め乗り越えるだけです!
繰り返しになりますが、商業で描いていく以上、先の理由から必ず「キャラクター」を求められます。どのようにすれば、存在感のある、地に足ついたキャラクターが生み出せるのか、漫画家志望の方は今一度考えてみるのはどうでしょうか。
いずれにしても「ファンはキャラクターにつく」
当初考えていたよりも、描き手と読み手の意識の差が明確に現れる設問だったように思います。
今後みなさまが漫画を描いていく上で、考えの一助となれれば幸いです。
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